top of page
yusuke-jimbo

富山市ガラス美術館で演奏しました

2024年11月10日日曜日富山市ガラス美術館にて開催中のエミール・ガレ展「パリの憧憬」にあわせて行われたライブラリー&ミュージアムコンサートでフルーティストの四十谷諒氏と演奏しました。





コンサートは「ギターとフルートによる光のアール・ヌーヴォー」と題してエミール・ガレと同時代のフランスの作曲家による作品を演奏しました。立ち見が出るほどたくさんの方に聴きに来ていただきました。


プログラムは


白鳥(サン=サーンス)

タイスの瞑想曲(マスネ)

ハバネラ形式の小品(ラヴェル)

あなたがほしい(サティ)

間奏曲(イベール)


アンコール

夢のあとに(フォーレ)





コンサート中にはガラス美術館館長の土田ルリ子氏によるお話もありました


終演後演奏者二人で


先日のブログでも書きましたが、共演したフルーティストの四十谷諒氏は僕の最初のギターの先生である四十谷隆司先生の長男にして呉羽高校音楽コースの1学年後輩。高校時代に「ギターとフルートで一緒に何か弾こうか?」という話も一瞬ありましたが実現せず20年の時を経て初めての共演となりました。また今回の企画を担当された富山市ガラス美術館の渡辺さんは高校の1学年先輩で管弦楽部ではチェロパートで一緒だった方でした。このような素晴らしい機会をいただきありがとうございます。


アンコールで弾いたフォーレの「夢のあとに」は今回のために新たにギター伴奏用に編曲しました。編曲については告知のブログでも触れたかったのですが、アンコールのネタバラシになってしまうのでコンサートが終了した後のこの記事で書きます。


「夢のあとに」の原調はc-moll(ハ短調)。二度上げたd-moll(ニ短調)のバージョンもありますが、今後他の楽器の方と演奏する機会もあるかもしれないので原調のc-mollで編曲することに。


いきなり楽器を持って音を出すことはせずに、一通り原曲に目を通してみて難しそうな和音や原曲通りに弾けない箇所をチェックします。楽譜に書き起こす前に小学6年生か中学1年生くらいのころに録画した鈴木大介さんとチェロの上村昇さんによる映像があったのでVHSを引っ張り出して参考に。




やはり原調で弾いております。左手の押さえを見るに6弦はレに下げていますが、5弦はラのままのようです。YouTubeで他にも原調でギター伴奏をされている方がいますが、6弦をレに下げている方が多いです。音域も広くなるしバスラインの進行がオリジナルに近くなって効果的です。


ただ6弦レ、5弦はラのままで編曲しようと試みるも、「ここ5弦がソだったら簡単なのに!」と思う箇所がチラホラ。もちろん5弦がラだから押さえられる箇所も5弦がソだったら難しい箇所もそれぞれあるんですが、この時点で5弦もソに下げるというアイデアを保留。しばらく考えます。


結局6弦レ、5弦ソに下げる変則調弦で編曲することにしました。5弦ラの調弦にしても省略したりオクターブ変更したりする箇所はあるので一長一短。どちらがいいかは甲乙つけがたいのですが、決め手になったのはこの箇所



(いまだに手書きで書いているアナログ人間です)


写真の下段ギター譜6小節目と7小節目(赤マルで囲った部分)。6小節目1拍目から2拍目の和音♭ラ♭ラドミが5弦ソだとセーハの高音弦側を浮かす形にすれば5弦と3弦の1フレットを1の指で押さえられます。5弦がラだと最低音の♭ラを6弦6フレットで取らねばならず左手の形が⑥④③①(または②の5フレット)弦で2310(もしくは2311)でポジション移動もある上に多少複雑な押さえになります。練習すればどうってことないのでしょうが。


続く7小節目(赤マル内)の属七の和音(ソファシレ)も5弦がラだとベース音のソを6弦5フレット、3の指で取らねばならず押さえが大変な上にベースも伸びづらくなりますが、5弦ソだと押さえも楽になる上ベースが開放弦なので音が持続しやすいです。やはりドミナント(属音)のソの音を開放弦でとれるというのは大きいです。曲の最後でも当然ドミナント(属和音)→トニック(主和音)の形が出てきますが、この部分でも5弦ソが力を発揮します。他にも5弦ソに調弦したおかげで大変美しく弾ける和音があり、個人的には気に入っているアイデアであり編曲です。


パラグアイの作曲家アグスティン・バリオスのギター曲に「君の面影」という作品があるのですが、この曲は6弦レ、5弦ソというギターではト長調やト短調で多く使われる調弦をとりながら、ハ長調で書かれています。初めてこの曲を知った中学生のときには「なんでこの調弦でハ長調で弾けるのだろう?」と素朴に疑問に思いましたが、ト長調はハ長調にとってのドミナント(属和音)ですので、ドミナントにあたるト長調の和音を上手く使ってハ長調で弾きやすく作曲しているのだなと後になって気づきました。また6弦レ、5弦ソであれば6弦と4弦、5弦と3弦の同じフレット(ポジション)の音がオクターブの関係となりセーハで押さえやすいという利点があります。今回のフォーレの編曲ではあまりそういう箇所はありませんが、バリオスのアイデアを大いに参考にさせていただきました。バリオスは他に6弦ド、5弦ソという変則調弦も用い、この調弦は大御所ジョン・ウィリアムズもたびたび編曲作品に使用しましたが、こちらも大変押さえやすくなる秘密があり素晴らしいアイデアです。今回の夢のあとにの編曲でも使用しようかと一瞬思いましたが、楽譜を読みながら弾けなくなりそうなのと低音のドがどうしても必要な箇所が少ないので採用しませんでした。


いい点ばかりをあげましたが「夢のあとに」を6弦レ、5弦ソで編曲する際の問題点を一箇所。許せない人にとっては絶対に譲れない部分でしょうし、5弦をラで演奏している方はこの部分のために5弦をソにしなかったんだろうと思う箇所です。

この曲はc-moll(ハ短調)なので最後の和音が下からド♭ミソドになるんですが、5弦がソだと低音のドを押さえながら上の♭ミソドが押さえられないんですね。5弦がラだとなんとか第1ポジションで弾けるんですが。解決策としてはソの音を省略するという方法もあるんですが、さすがに最後のトニック(主和音)の構成音が1つ足りないというのには抵抗もあると思います。もう一つの解決策としてソを3弦開放弦で取りド♭ミドを6弦10フレット、5弦8フレット、4弦10フレットで弾くという方法もありますが、カンパネラ奏法のようになって音色とそれぞれの音のバランスが悪くなります(最高音のドが聴こえづらく、音程も狂いやすい)。僕はすべての和音を四和音で弾かず、一拍目と最後の和音だけ3弦開放弦のソを足して弾きましたが、原曲とは違うので納得されない、自分で弾くとなると抵抗がある方もいると思います。練習していけば全部四和音で音程もバランスもそこそこに弾けるようにはなるのでしょうが、この調弦でのマイナス点です。


結構詳しく書きましたが、フォーレの「夢のあとに」は有名で人気な曲ですのでギター伴奏用に編曲したいと思う方の参考になれば幸いです。



閲覧数:16回0件のコメント

Comments


bottom of page